監査法人ライトハウス

当法人で手掛けるデューデリジェンスについて

2014/10/15

当法人で手掛けておりますサービスの一つにデューデリジェンスがあります。特に企業の財務や事業内容の評価がメインとなり、その結果を受けて評価対象企業の株価の算定も行っています。そこでの評価額は、通常の企業会計における有価証券の貸借対照表計上額とは大きく異なるものです。

金融商品会計基準では、企業が保有する他社の株式の貸借対照表上の評価は、その保有目的(売買目的有価証券、満期保有目的債券、子会社及び関係会社株式、その他有価証券)に応じて時価もしくは取得価額でなされます。時価のない有価証券は原則としては取得価額で評価されますが、実質価額が著しく下落した場合には、実質価額の回復可能性がある場合を除き減損処理がなされることになります。時価とは通常は証券取引所における株価等、実質価額とは出資先の財務諸表に記載された一株当たり簿価純資産額が基礎となり、それらはいずれも比較的容易に入手可能なデータに基づき、評価も簡易に実施できると言えるでしょう。

一方、財務デューデリジェンスでは、まず対象企業の貸借対照表を(税務基準ではなく)一般に公正妥当と認められる企業会計の基準で作成した場合の適正な簿価を算定し、次に不動産や債権など取得価額で計上されている資産の時価評価や、必要な引当金等の負債を追加計上して実態B/Sを作成することになります。これらの作業には、会計監査と同様、あるいは、それ以上の時間と労力をごく短期間に集中的に掛けて調査を行うことが必要になります。この結果算定される実態純資産は、一つの企業価値評価額と言うことができます。実態純資産は簿価純資産とは異なりますので、会計上の実質価額とは乖離することになります。
また、企業価値評価手法としてフリー・キャッシュ・フロー法や類似上場会社法などを用いますと、将来的な、あるいは、業界平均的な収益力や株価が加味されることになります(日本公認会計士協会「企業価値評価ガイドライン」はこちら)。
さらに、税務上は、原則的な評価方式としての「類似業種比準方式」「純資産価額方式」の他に、少数株主が取得した非上場株式の売買時には、特例的な簡便法として「配当還元方式」を適用することが認められています。こちらは実質価額がいかに高かろうとも、旧商法・会社法の時代の「額面」に近い低廉な取引額となるケースが多くなります(国税庁のタックスアンサーはこちら)。

これらの中でどのような方法を採るべきなのかは、評価が必要とされる場面々々に応じて、最も合理的なものを選択することになりますが、同じ会社を評価するにもいろいろな数字が出てくることになり、一般の方にはたいへん不思議なことかもしれません。会計というのは、「お金」という数字で表現され、客観的なもののようにも思われますが、意外に相対的・主観的な要素も多いものです。その中での合理性の判断は大変難しい問題であり、われわれ公認会計士が業務を行う際の最大の悩みどころですが、それを行うことがわれわれの存在意義でもあるのでしょう。